海外旅行は、新しい体験や出会いがある一方で、慣れない環境や気候、食文化の違いから体調を崩しやすい側面もあります。言葉の壁や高額な医療費が重なると、不安や経済的負担が増大してしまうことも。ですが、事前に備えておくことで不安を大きく軽減し、旅そのものを最後まで楽しむことができます。
この記事では、実際に起こりやすい体調トラブルの具体例、旅行前に必ず準備したい常備薬・装備、国別の医療費目安、そして万一に備えた保険・言語サポートの整え方を紹介します。
起こりうる体調トラブルの例
海外旅行中に発生しやすい体調トラブルについて、種類ごとに説明し、実際に報告された具体例を紹介します。
海外旅行中に発生しやすいトラブルは、以下の6つのカテゴリに分けられます:
- 気候・乾燥・冷房による体調不良
- 食中毒・水あたり
- 感染症・蚊による病気
- 持病の悪化・環境変化による影響
- 騒音・環境ストレス・虫刺され
- その他(アレルギー・空気汚染・長距離移動)
気候・乾燥・冷房による体調不良
海外では気候が日本と大きく異なることがあり、特に高温多湿な地域や極端に乾燥した場所では体調を崩しやすくなります。また、機内やホテルなどで冷房が強く効きすぎていることも珍しくありません。そうした環境下では、脱水症状、のどや肌の乾燥、冷えによる体調不良などが起こりやすく、適切な服装や水分補給が重要です。
実際の事例
- ドバイ国際空港の冷房病:2023年、ドバイ空港の長時間トランジット中に冷房が強く効いたエリアで複数の旅行者が寒気や体調不良を訴え、空港医務室で応急処置を受けた。
- フライト中の乾燥で喉炎症:機内の過度な乾燥環境により、のどの粘膜が炎症を起こし、ロサンゼルス到着後に現地のクリニックを受診した事例がSNSで報告された。
- プーケットで熱中症搬送:2019年、30代の日本人旅行者がビーチで長時間過ごした後にめまいと吐き気を訴え、現地病院に搬送された(タイ現地紙)。
対策
- 水分をこまめに摂取する
- ストールや薄手の羽織りで冷房対策をする
- フライトでは加湿マスクやのど飴で乾燥対策
食中毒・水あたり
屋台やローカルレストランでの未加熱・生水使用が原因で起きる腹痛や下痢。これにより旅行プランが台無しになるだけでなく、深刻な脱水症状につながることもあります。
実際の事例
- ホーチミンで日本人学生34名が集団食中毒:2016年、ベトナム航空の機内食により学生団体が帰国後に体調不良を訴えた。
- バリ島で氷入りドリンクが原因の下痢:生水で作られた氷を使ったジュースで旅行者が複数下痢症状を発症(旅行ブログ多数)。
- リオのシーフードレストランで集団食中毒:現地報道によると、観光客を含む複数人が下痢・嘔吐でクリニックへ搬送。
対策
- 氷や生水を避け、ボトルウォーターを使用
- 火の通った食材を選ぶ(屋台含む)
- 整腸剤や下痢止めを常備
感染症・蚊による病気
熱帯や湿地帯ではデング熱やマラリア、ジカ熱といった蚊媒介の感染症に注意が必要です。予防薬の準備や虫除け対策が不可欠です。
実際の事例
- バリでデング熱感染:2024年の保健省発表で、観光客を含む2,000人超がデング熱を発症。
- ケニアでマラリアによる入院:2023年、予防薬未使用の観光客がマラリアを発症し、ナイロビで集中治療を受けた。
- ペルーでジカ熱疑い例:2018年、クスコ滞在中に発疹を伴うジカ熱が疑われ、外務省が注意喚起を発出。
対策
- DEET含有の虫除けスプレーを常用
- 長袖・長ズボンで肌の露出を減らす
- 蚊帳や蚊取り線香を活用(宿泊先)
持病の悪化・環境変化による影響
持病のある方は、時差ボケやストレス、気圧差によって症状が悪化しやすく、特に服薬管理や食事の変化に注意が必要です。
実際の事例
- 喘息の悪化:乾燥した空気と寒暖差の激しいイスタンブール滞在中に喘息発作を起こし、現地のクリニックで吸入治療を受けた。
- 糖尿病治療の困難:渡航先で血糖値コントロールができず、薬を求めて現地薬局を何軒も回った事例がSNS上で話題に。
対策
- 持病がある人は英文の服薬証明と処方箋を持参
- 常用薬は多めに持っていく(遅延対策)
- 気圧・気温差の激しい地域は事前に医師と相談
騒音・環境ストレス・ベッドバグ
宿泊施設の環境が悪いと、騒音や虫刺され、睡眠不足によるストレスで体調を崩すケースがあります。十分な睡眠が取れないことによる免疫低下や疲労の蓄積は、旅行中の健康リスクを高めます。
実際の事例
- 深夜のホステルで睡眠不足:バンコクのカオサン通り近くのホステルで、外の騒音が一晩中続き、数日間眠れなかったというレビューが複数見られる。
- バルセロナのホステルでベッドバグ被害:2022年、格安ホステルに滞在した旅行者がベッドバグに刺され、皮膚科で治療を受けた。
- ドミトリーで虫刺され被害:2023年、インドの安宿で複数の旅行者が虫に刺され、掻き壊して化膿したとSNSで報告。
対策
- 耳栓やアイマスクを持参して睡眠環境を確保
- 室内スプレーやベッド周辺の点検で虫対策
- 静かなエリアおよび質の高い宿泊施設を利用
その他(アレルギー・空気汚染・長距離移動)
これまでに挙げた以外にも、環境や体質に起因する体調不良のリスクがあります。渡航前に自分の体質と照らし合わせて注意する必要があります。
実際の事例
- ナッツ入り料理によるアレルギー反応:台北のレストランでアレルギー表示がなく、ピーナッツアレルギーを持つ旅行者が救急搬送されたケースがSNSで話題に。
- PM2.5による呼吸器悪化:インド・デリー滞在中、空気の悪さで喘息の症状が悪化し、吸入薬が手放せなかったという旅行ブログの記録。
- 飛行機でのエコノミークラス症候群:12時間フライト中に座り続けた60代男性が足の腫れと呼吸困難を訴え、到着地の病院で血栓が見つかる(医療事例)。
対策
- アレルギーカード(多言語)を持参し、外食時に提示することで誤食を防ぐ
- PM2.5が高い地域では高性能マスクを使用し、外出時間を制限する
- 長距離フライトではこまめに立ち上がって歩く・足を動かす・水分を取る
持っていくべき常備薬・備えグッズ
旅行中にすぐ使える常備薬や装備を揃えておくことで、軽度の症状はセルフケアで乗り切りやすくなります。以下は必須アイテムです。
- 胃腸薬・整腸剤:食中毒や下痢に迅速に対応できる。例:正露丸、ビオフェルミン。
- 解熱鎮痛剤:発熱や頭痛、筋肉痛に。例:カロナール、イブ。
- 抗アレルギー薬:虫刺されや花粉症状の緩和に。例:アレグラ、クラリチン。
- 外用薬・消毒薬:切り傷や虫刺されの消毒と保護に。例:ポビドンヨード、ムヒ。
- 体温調節グッズ:気温差に対応するストールや薄手ダウン。
- 虫よけスプレー:DEET入りで蚊対策。
- 加湿マスク:機内や乾燥地帯で喉・肌を守る。
医療費はどのくらいかかる?(国別比較)
医療費の高さは国によって大きく異なります。以下は目安として知っておくと安心です。
医療費はどのくらいかかる?(国別比較)
医療費の高さは国によって大きく異なります。たとえ軽い症状であっても、受診や入院にかかる費用は日本よりはるかに高額になることがあります。対策をしていても体調に違和感を感じたら無理をせず、できるだけ早く病院を受診することが大切です。
国名 | 救急外来診察費 | 1泊入院(一般) | 1泊入院(個室) | 通訳 |
---|---|---|---|---|
タイ | 約15,000円 | 約75,000円 | 約120,000円 | △ |
シンガポール | 約45,000円 | 約150,000円 | 約225,000円 | ◯ |
南アフリカ | 約22,500円 | 約90,000円 | 約135,000円 | × |
アメリカ | 約180,000円 | 約750,000円 | 約1,200,000円 | ◯ |
ブラジル | 約30,000円 | 約105,000円 | 約150,000円 | △ |
フランス | 約60,000円 | 約225,000円 | 約300,000円 | ◯ |
これらの費用は保険未適用の場合の目安です。現地の提携病院でキャッシュレス診療を利用できれば、自己負担を大幅に減らすことが可能です。
海外旅行保険を契約しておくことで、診療料金に怯えずに受診が可能です。
備えとしてやっておくべきこと
万が一に備えて、以下の準備をしておきましょう。
海外旅行保険付きクレジットカード/保険を準備
医療費が高額な国では、1回の受診や入院で数十万円〜100万円以上かかることもあります。海外旅行保険つきのクレジットカードは必須です。利用付帯・自動付帯の条件を確認し、キャッシュレス診療対応のカードを優先的に選びましょう。
また、クレジットカードを複数持つことで、補償額を合算して備えることが可能です。

医療ネットワークの確認
旅行先に日本語が通じる病院や、大使館・領事館が紹介している提携病院があるかを確認しておくと安心です。大使館のホームページや外務省の「たびレジ」に登録しておけば、現地の安全情報や緊急時の対応情報も得られます。
また、海外旅行保険の公式サイトから、提携病院リストをダウンロードしておくのもおすすめです。
伝え方・言語サポートを用意
症状を伝えられないと、受診や薬の処方もスムーズにいきません。自分の持病やアレルギー、服用中の薬などを英語や現地語で記したメモを作っておきましょう。また、Google翻訳などのオフラインでも使える翻訳アプリをインストールし、医療関連のフレーズ集を画像保存しておくのも効果的です。
クレジットカードによっては、通訳や病院の手配を行なってくれる日本語サービスも用意されています。
万が一に備えて、以下の準備をしておきましょう。
まとめ
海外で体調を崩した際の負担は、日本とは比較にならないことが少なくありません。ですが、事前の準備によって精神的・金銭的なダメージは大きく軽減できます。
- 起こりやすい症状を把握し、常備薬や装備でセルフケアの幅を広げる。
- 医療費の高さを理解し、保険付きクレカや保険でキャッシュレス対応を整える。
- 症状に不安がある場合はためらわずに医療機関へ連絡・受診する。
旅行前の備えが、安心して海外を楽しむ最大のポイントです。忘れずに準備しましょう!